フランチャイズ・ガイドライン改正

フランチャイズ加盟契約に関わる開示事項を定めた中小小売商業振興法施行規則(小振法)の改正案が経済産業省中小企業庁から,そしてフランチャイズ・ガイドラインの改正が公正取引員会から,1/29に発表されました。それぞれ3/1までパブリックコメントを受け付けていますので,是非ご活用ください(以下にリンクを貼っておきます)。今回は,フランチャイズ・ビジネス支援に携わる専門家として,これらの改定案について解説します。

●中小小売商業振興法施行規則の一部を改正する省令(案)に対する意見公募について
●「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」の改正(案)に対する意見募集について

小振法の改正案について(類似立地店舗の売上実績開示)

まず今回の小振法とガイドラインの改正にいたった経緯は,コンビニ・チェーンに対する社会的な問題意識の高まりがあったということを理解しておく必要があります。ですから,今回の改正案の内容が外食チェーンにはそぐわない場合もあることを,前提として認識しておかなければなりません。

さて小振法ですが,今回の改正では「立地条件が類似する加盟者店舗の直近3年間の収支」の開示が求められています。具体的には売上高,売上原価,ロイヤルティ,人件費,販管費,収支等の算定根拠や類似性の判断根拠の開示が必要となり,外食チェーンにも大きく影響してくる内容です。しかしながら,この「立地条件が類似」という表現があいまいで,フランチャイズ本部としては対応に苦しむことになるのではと思われます。コンビニのように全国に1万店舗以上を擁するチェーンとは違い,飲食チェーンの多くは統計解析的な売上予測の信ぴょう性を担保するに十分な店舗数を抱えているわけではないというのが実情です。

インナー情報ですが,経産省の担当官は平均値や概算値を提示するのは認めないと言っていたということで,類似店舗の実績値を全て開示しなければいけないということになるのかもしれません。あるいは,直営店の場合フランチャイズ店とは収益の構造が異なる(食材マージンやロイヤルティが控除されない)ので,その部分を加味して提示するとなると実績値ではない,ということになるのでしょうか。あるいは,店舗立地が決まる前に一定エリアでの出店権利を確保するエリアエントリー型のフランチャイズ契約(マルチユニット契約,エリア契約など)の場合は類似店舗の実績は提示しなくてよいのかなど,不明瞭な点が多々あります。

フランチャイズ・ガイドラインの改訂案について

これについては,昨今のコンビニの24時間営業問題などで,ある程度予想された内容となりました。具体的には,①年中無休や24時間営業に関して加盟者から協議の申し入れがあった場合は本部は拒絶できない,②加盟者の店舗の属するエリアでの本部の新規出店(ドミナント出店)計画は事前に加盟者に説明し取り決めをしそれを破ってはならない,③本部の社員が加盟者の意思に反して仕入れを強要してはいけない(コンビニのおでん問題),④見切り販売に関しては柔軟に価格変更できるような仕組みのほうが望ましい,といった内容です。

これらは一応フランチャイズに関する時効と言いながらほとんどコンビニの問題であり,外食チェーンにとっては当てはまらないものもあります。しかしそうは言うものの,名称がフランチャイズ・ガイドラインである以上,フランチャイズ事業を展開する本部は少なからず影響は出てくるでしょう。これらの改定に沿った「法定開示書面」の作成が求められることになり,特に売上実績や売上予測に関する部分については,慎重な対応が求められることになるでしょう。

ところで,そもそもコンビニのいわゆるCタイプと言われるターンキー型(明日からよろしくといわれて鍵だけ渡されて次の日からオーナーとして現場に入る,というようなパターンを指してこう呼ばれる)と,自前で資金を投入して店舗を取得する飲食フランチャイズとは契約の思想が異なります。別の言い方をすれば,資本を投資しない加盟者がオペレーターとして業務委託を受けるコンビニCタイプのフランチャイズと,経営資本を投資して物件を取得し経営者としてノウハウと商標の使用許諾を受ける通常のフランチャイズは,全く別物なのです。日本のフランチャイズ業界の中で圧倒的に物量の多いコンビニを基準に法改正をする事情は分からなくもないですが,本来はこの2つのタイプを分けて論じるべきなのだろうと,個人的には思料します。

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000213647

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