外食などサービス&ホスピタリティ産業の動向

今回は,コロナ禍における外食などサービス&ホスピタリティ産業に関して,現状の概観ウォッチのために2021年4月の紙面から統計データを用いて解説されている記事をピックアップしてみました。直接的な食関連の情報に加えて,いくつかの消費動向に関わる国民生活や経済産業に関する情報も取り上げています。そしてそれらの情報から,今後のサービス&ホスピタリティ産業の動向を考察します。

2021年4月の紙面から

  • 2020年,国内線利用者は前年より56%減,国際線は81%減(日経朝刊:2021/4/1
    国内線旅客者数は2012年以降増加傾向で2020年は新型コロナウイルスの影響で激減,前年に比べ56.2%減の4673万人だった。国際線は前年に比べ81.4%減で436万人。(国土交通省,航空輸送統計2021/3/31より)
  • 我国における2020年死亡者数は前年より減少(日経夕刊:2021/4/2)
    2020年死亡者数は138.5万人で前年より9373人少なかった(人口動態統計速報より)。死亡率の高いコロナ感染症の拡大にも関わらず死亡者数は11年ぶりに減少した。全体的に見ればコロナ対策は奏功していると言えなくもない。
  • 2020年の青少年の自殺者数は1980年以降で最多に(日経夕刊:2021/4/5)
    2020年に自殺した18歳以下の児童数は479人で前年より140人増,統計のある1980年以降で最多となった(文部科学省統計より)。国立成育医療研究センターが2021年2月に実施したアンケート調査によると,回答した小学4~6年生の15%,中学生の24%,高校生の30%に中等度以上のうつ症状があったとしている。
  • データで見る新しい生活様式,食の変化と現金回避(日経朝刊:2021/4/6)
    経済産業省はインテージとジーエフケー・マーケティングサービス・ジャパンのPOSデータを用いた小売販売指標を開発した。同データからコロナ禍における販売動向を読み取る。①マスクや手指消毒剤などの感染予防品の販売量は大幅に前年を超えた,②在宅勤務によりパソコン関連商品やスーパーでの食料品関連の販売が増加した,③飲食サービスの販売額はあらゆる業態で前年比を下回っている,④非接触推奨によりキャッシュレス決済比率が大幅に上昇,となっている。
  • 国民1人10万円の特別定額給付金,大半は消費に回らず(日経朝刊:2021/4/15)
    2020年4月に発表された国民1人あたり10万円の現金給付の使い途に関する調査を,マネーフォワード,早稲田大学らが共同で行った。ネット決済等の履歴から明確に消費に回された金額は6,000円程度であり,ATM引き出しや親族への送金を含めても27,000円程度だった。
  • 少子化加速で抜本策「子ども庁」設立へ(日経夕刊:2021/4/19)
    菅首相は,厚労省,文科省,内閣府など複数の省庁にまたがる子育て施策を一本化して扱う「子ども庁」を創設する意向を示した。2021年1月の出生数は前年同月比14.6%減の64,000人で,新型コロナの感染拡大で生み控えが広がった影響とされている(厚労省「人口動態統計速報」より)。経済協力開発機構(OECD)などの調査によると,日本の家族関係社会支出(手当や給付金など)は国内総生産(GDP)比1.9%で,少子化対策で効果を上げている英国(3.4%)やフランス(2.9%)に較べて見劣りしている。
  • 2020年度輸出は前年比8.4%減,コロナ禍の影響大(日経夕刊:2021/4/19)
    財務省発表の貿易統計速報によると2020年度輸出は前年比8.4%減で69兆4873億円,リーマン危機の2009年度(前年比17.1%減)に次ぐ大きさの落ち込みとなった。中でもコロナ禍と半導体不足などの影響により生産販売両面で打撃を受けた自動車は前年比19.0%減だった。一方,輸入も前年比11.6%減の68兆1803億円となり,国内需要の低迷から原燃料輸入が大幅に減少したことが大きく影響した形となった。
  • 輸出入で中国依存比率高まる,米中対立がリスクに(日経朝刊:2021/4/20)
    財務省発表の貿易統計速報は,2020年度輸出入で中国への依存を強める日本経済の現状を映した。全輸出に対する中国向輸出の比率は22.9%と10年ぶりに過去最高を更新,米国を抜き中国が最大の輸出先となった。コロナ禍では景気回復で先行した中国向けが20年夏ごろからプラスに転じた。輸入額に占める中国比率も2019年度22.9%から2020年度27.0%と急上昇し過去最高水準となった。テレワーク需要を反映してパソコンなどの電算機類の輸入が増えたことが要因。
  • 在宅勤務追い風でノートPCの出荷が1000万台超える(日経朝刊:2021/4/21)
    電子情報技術産業協会(JEITA)は2020年度のノートPCの国内出荷台数が前年比56.1%増の1077万台となり,統計を取り始めた1990年以降で初めて1000万台を超えたと発表した。小中学生に1人1台のデジタル端末を配備する「GIGAスクール構想」で端末の配布や,在宅勤務の増加で企業や個人による購入が増加したことによる。

コロナ感染拡大から1年が経過して(今後の予測)

2020年の国内死亡者数は減少していることから,国民の多くは自分の健康に責任をもって自重した生活をしているものと思われます。そういうことでいえば,マスコミ報道に反してコロナ対策はそれなりに奏功しているということが言えるでしょう。また過去のスペイン風邪や香港風邪などのパンデミックスは大体2年程度で収束していることを考えると,あと1年でコロナ禍は大方落ち着くのではないかとも考えられます。

ところで食関連産業を概観すると新しい生活様式として食は外部化から内部化へとシフトしており,以前のように外食産業が活況を取り戻すかどうかは不確実であり,むしろ中食や内食あるいはECや冷凍食品販売へとチャネルへシフトすると見るほうが自然でしょう。またコロナ禍での旅客の落ち込みは激しくインバウンド需要が再び活性化するのかどうかも不確かな状況で,この夏に東京オリンピックがどのように開催されるのか(あるいはされないのか)も,その後のインバウンド需要に大きな影響を残しそうです。

そして少子高齢化で人口減少が予測される我が国において,青少年の自殺が増加傾向にあることには心が痛みます。米中対立,保護貿易主義,根強い人種差別など,現代の世界は分断か統合かの選択を迫られているのだと思います。我々大人世代は,コロナにより分断を助長して子供たちの未来を危うくするのではなく,DXにより他者とつながり世界とつながる統合の途への橋渡しをしなければならないのではないでしょうか。そのようにして新しい世代が統合の途を歩み,新しい世界秩序の中で新しい日本のアイデンティティを確立していくことを切に願っています。

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