年度末に向けての各外食チェーンの動き

2020年度はコロナに始まりコロナに終わることになりそうです。外食チェーンは企業規模が大きいだけに,業態転換や事業再構築に大きなエネルギーを必要とするし,その分時間がかかることもあります。コロナ関連の話題には食傷気味なところはありますが当事者としては避けられない問題であり,生き残りのためにはあらゆる手段を講じる必要があるでしょう。今月は,年度末に向けた主要チェーンの動きを,直近1カ月の新聞紙上から追ってみました。

コロワイド,子会社アトムの株を売却へ(日経朝刊:2021/3/3)

コロワイドは,焼肉店チェーン運営の子会社アトム(東商2部)の発行済み株数の12%を売り出すと発表,保有比率は50%強から41%に下がる。コロワイドは売却で得た資金を有利子負債の返済などに充てる予定。

<東証>スシローGHの株価が続伸(日経QUICK:2021/3/2)

コロナ禍で苦戦する外食企業において,スシローGHの成長性が評価され株価が続伸している。スシローGHは2/26に,吉野家HDから持ち帰り寿司の「京樽」を買収すると発表しており,テイクアウト需要の取り込みも評価されている模様。

デニーズがキッチンカー販売事業に参入(日経電子版:2021/2/25)

デニーズを運営するセブン&アイ・フードシステムは,キッチンカーを使った料理の移動販売を始める。企業から要望のあった地域にキッチンカーを出して昼食需要を取り込む。2021年1月のデニーズの既存店売上高は,緊急事態宣言の影響で前年比61%と落ち込んでいる。

ロイヤルHD,双日と資本提携でリスク回避へ(日経朝刊:2021/2/21)

ロイヤルHDは,2月中旬,総合商社の双日と資本業務提携を結んだ。ミドルサイズのブランドを増やすことで多角化を進めリスク回避してきた同社だが,この戦略がコロナでは裏目に出た。菊池会長の狙いは,外部の血を入れて次世代への基礎固めをすることのようだ。

日本マクドナルドHDの日色氏,CEOに昇格(日経朝刊:2021/2/20)

日本マクドナルドHDの日色社長はCEOに昇格する。コロナ禍ではテイクアウトやデリバリー事業に長けた同社が一人勝ちの様相を呈しているが,他外食チェーンも同様のサービスの導入を急いでいる。新CEOである日色氏の今後の手腕が注目されるところだ。

中部地区の外食チェーン,ヨシックス,物語,コメダなど(日経地域:2021/2/19)

中部地区の主要外食チェーンの2021年1月の既存店売上高は次の通り。「や台ずし」のヨシックスは前年比27%,比較的堅調な焼肉業態「焼肉きんぐ」の物語コーポも苦戦の模様,コメダは前年比89%。政府の時短要請で各社夕方からの集客ができないことが原因。

居酒屋チェーン中堅のヴィアHDが私的整理(日経朝刊:2021/2/16)

「やきとりの扇屋」などを運営する居酒屋チェーン中堅のヴィアHDが,私的整理の一種である事業再生ADRを申請し受理された。コロナ禍で行政が振るわず財務状況が悪化した。コロナ関連で外食の上場企業がADRを申請するのは初めて。

外食チェーン各社,生き残りをかけた資本増強(日経朝刊:2021/2/16)

ロイヤルHDは双日や金融機関から第三者割当増資などで約240億円を調達,クリレスHDは永久劣後ローンで150億円調達,ゼンショーHDは劣後ローンで100億円調達,エーピーHDは第三者割当増資で約25億円を調達,リンガーハットは劣後ローンで50億円と新株予約権発行で23億円を調達。

ワタミ,明治乳業と宅配で連携,販路を相互活用(日経MJ:2021/2/12)

ワタミは既存の食事宅配事業で明治乳業製品の販売を始める。コロナで中食需要が伸長しており,両社は互いの販路を活用し合うことで自社製品の拡販につなげる。明治乳業の特約店は全国に3000店あり,この販路を活かせば弁当類の拡販が見込める。外食企業との連携の動きはコンビニでもあり,ローソンは「串カツ田中」や「たいめんけん」などの外食企業とのコラボ商品に力を入れお互いの集客につなげている。

主要外食チェーン決算,ワタミ,コロワイド,すかいらーく他(日経朝刊:2021/2/11)

外食各社は決算予想を発表した。ワタミ(2021年3月期)売上高623億円(前比69%),営業損益▲99億円,連結最終損益が▲16億円((前期は▲29億円)。コロワイド(2021年3月期)連結最終損益▲96億円(前期は▲64億円)。すかいらーく(2020年12月期)売上高2,884億円(前比77%),営業損益▲230億円(前期は205億円の黒字),最終損益▲172億円の赤字(前期は94億円の黒字)。ペッパーフード(2020年12月期)税引損益▲39億円(前期は▲26億円)。

日本KFC,2020年4~12月の営業利益は過去最高(日経朝刊:2021/2/11)

日本KFCの2020年4~12月の売上高は12%増の684億円,連結営業利益は前年同期比35%増の57億円で過去最高。また同期間の直営店とFC店を合わせたシステム・ワイド・セールスは12%増の1,098億円で,これも過去最高だった。ドライブスルーを含めたテイクアウト需要が強く,デリバリーの強化も利益に貢献した。

マクドナルド2021年12月期,前期比2%増の320億円(日経朝刊:2021/2/10)

日本マクドナルドの2020年12月期の連結決算は売上高が前期比2%増の2,883億円,営業利益は12%増の312億円。新型コロナでテイクアウトやデリバリーの需要が増え,直営店とFC店の売上高を合計したシステム・ワイド・セールスは7%増の5,892億円と過去最高だった。また,2021年12月期の連結営業利益は前期比2%増の320億円と予想,2期連続の営業最高益を見込む。

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