参院選が終わり10月からの消費税増税が確実になってきました。今月のテーマに入る前に,少し消費税増税についてみてみましょう。外食チェーンの中ではテイクアウト比率の高い日本KFCが,増税後もイートインメニューの値上げをしないと発表しました(日経MJ:2019/7/24:13P)。つまり,日本KFCは2%の増税分を「飲み込む」,実質値下げということになるのですが,消費者としてはヤンヤと拍手したいところです。
ところで,消費者はこういった商品価格のどのあたりに,納得感,お得感,抵抗感を感じるのでしょうか。国税庁とすれば,国民の痛税感を減ぜさせるために総額表示で税額がよくわからない状態にしておきたいというのが本音でしょう。したがって2014年4月に諸費税が8%に上がるまでは,税込み価格のみの「総額表示」を指導していました。しかし税額が8%となるに際して,総額表記だけだと消費者心理に割高感が生じ消費が落ち込みが懸念され,痛税感が喚起されるのもやむなしで「総額と本体価格の併記表示」となったようです。以上はあくまでも筆者の私見です。2019年7月の日経新聞「やさしい経済学・消費者の心理と行動」で7回に亘り,専門家による詳しい解説が掲載されていましたので,ご興味のある方はご一読をおすすめします。
●外食チェーン各社に見る人事施策
出産や育児でいったん会社を離れた社員の「出戻り」,復帰を歓迎する動きが活発になっています。すかいらーくHDでは,「おかえり すかいらーく」という再雇用制度を整備し,募集サイトを解説しました(日経朝刊:2019/7/19:15P)。組織の論理で「裏切者」として敬遠されがちだった「出戻り」ですが,現場を熟知していて教育の手間が省けるという利点もあります。最近マイナビが1519社に対して行ったネット調査では,飲食業の約6割のシニア人材の登用を望むものの実際に雇用できているのは5割弱と乖離が見られました(日経MJ:2019/7/5:13P)。今後は飲食現場でも短時間労働などで,シニア層の活躍する場が増えていきそうです。
飲食店向け人材サービスのクックビズは,ベトナムのドンア大学,外食企業,アパレル企業と4者で人材紹介に関する提携をしたと発表しました。就職意識の高い学生を現地で教育し日本の外食企業に紹介する仕組みを構想しており,2023年には年間1000人以上の紹介を目指したいとしています(日経MJ:2019/7/12:13P)。コメダHDは,ミャンマーの最大都市ヤンゴンの日本語学校で店員養成を始めました。約40名の生徒に在留資格「特定技能1号」を取得させ,2020年には直営店の即戦力として雇い入れる計画です。現地の開校記念セレモニーに出席した碓井社長は,将来的にはFC店への紹介もしていきたいと語りました(日経地方:2019/7/30:11P)。
モスフードサービスは,顧客自らが機械でメニューを選び精算するセルフレジを導入します。平日昼間のレジ混雑を避けるためと,店員の削減による人件費抑制を狙ってます(日経朝刊:2019/7/6:13P)。ゼンショーHDの「すき家」もスマホにアプリを事前登録することで,注文から決済までアプリで完了するサービスを開始します。顧客はレジに並ばなくてよいので,店舗としてはピーク時に混雑緩和や回転率向上が期待できます(日経MJ:2019/7/10:13P)。くら寿司は顧客のスマホで座席予約や事前注文ができるシステムを導入し,スシローは自動で皿数を数える会計システムの導入で人件費削減を徹底していく方針です(日経朝刊:2019/7/17:13P)。
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