2018年5月23日発行の日経MJに,日経新聞社2017年度飲食業調査が発表されました。今月はこの調査を中心に,外食業界の現状と今後を考察します。
1.禁煙化の流れが進んでいる(日経MJ:2018/5/25:13P)
ゼンショー傘下のココスは2019年9月までに全面禁煙にすると発表(日経MJ:2018/5/25:13P),先月はモスバーガーや串カツ田中の全店禁煙の記事も掲載されました。2017年2月,厚労省は健康増進法改正案をめぐり受動禁煙を防止するため飲食店の全面禁煙化の方針を打ち出しており,東京オリンピックを控えた東京地区では特に禁煙化の流れが加速しています。
2.メニューの高付加価値化(日経MJ:2018/5/28:13P)
メニューの高付加価値化とはいうものの,現実は原材料高と人件費増というコストを吸収するために高単価高利益率のメニュー割合を増やさざるを得ない,というのが実情でしょう。その中で,あえて低単価メニューを投入するとした「英国風パブHUB」の記事は目を引きました。フードメニューの8割を500円以下に,また490円のドリンクも増やし,ワインコインで利用できる割安感を演出するとのことです(日経MJ:2018/5/28:13P)。
3.人手不足への対応に追われる(日経MJ:2018/5/30:13P)
人手不足により出店計画に支障をきたす企業が少なくありません。物件取得の競争や,家賃の高騰などよりも,スタッフが集まらないことが悩みの種のようです。そのような中,スタッフ確保のためのインフラ整備の記事がいくつか掲載されていました。
パーソナルホールディングス傘下のパーソナルプロセス&テクノロジー社は,外食業などで働くバイトスタッフの給与を前払い(前払い当日までに働いた賃金分)するサービスを始めます。これは,同社が外食企業に代わってスタッフに給与を前払いし,あとで一括して企業側に請求する仕組み。バイトスタッフはスマホを使って1回900円でサービスが利用でき,同種サービスに較べて割安な料金設定となっています(日経MJ:2018/5/28:6P)。
チャットボットスタートアップのハチドリ(東京・品川)は,バイトシフト管理のスマホアプリを開発しました(日経MJ:2018/5/28:6P)。同種のサービスはリクルート社の「シフオプ」など他社からも出ていますが,IoTによる労務管理は日進月歩のようです。
その他,5月23日の日経MJトップには,個店主義のバルニバービや,元トレインズ代表西山氏の単品特化型の業態が紹介されていました。筆者が前職(サントリー)の頃,業態開発部の責任者が「立地なんか関係ない,スタッフと業態が良ければ人は呼べる,飲食業はノリ=色気だ」と豪語していたのを思い出しました。居酒屋が苦戦しチェーンオペレーションのあり方が問われている中,チェーンオペレーション・システムの構築を専門とするコンサルタントとしては,業態論をどうとらえるか改めて考えさせられました。
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