外食業態の次の一手は?

当然のことながら,ここのところのコロナ禍に苦しむ外食業界関連のニュースは厳しいものばかりです。日経新聞社が上場している主要外食企業100社に調査したところ,7/29の時点で閉店あるいは閉店を計画している店舗が1200店となりました。これは,対象外食チェーン既存店6万店の約2%にあたり,主だったところでは,コロワイドは全店舗の1割弱にあたる196店,ワタミは全店舗の1割強の65店,吉野家HDは全体の約5%にあたる150店,ジョイフルは収益改善の見込めない約200店を閉店するとしています(日経朝刊:2020/7/30:1P)。

コロワイドによる大戸屋TOB

居酒屋が大苦戦する中コロワイドが大戸屋に対してTOBを仕掛けました(日経朝刊:2020/7/10:7P,他)。レインズを買収するなどM&Aで企業規模を拡大してきた同社だけに,TOBという手法自体には目新しさは感じません。
しかしながら,お家騒動で大戸屋HDの経営から手を引いた創業家の株がコロワイドに流れたというような話や,何とかして非アルコール業態の大戸屋を子会社化して居酒屋主軸から脱却したいというような焦りも見え隠れし,キナ臭さが漂っています。
大戸屋HD側はコロワイドのTOBを敵対的買収として徹底抗戦の構え,また大戸屋の株主には個人投資家が多くコロワイドの企業風土を嫌う向きもあるようで,TOBの成り行きが注目されます。

ペッパーフード,ペッパーランチを売却

ペッパーフードサービスは,ステーキチェーンの「ペッパーランチ」を約80億円で投資ファンドのJ-STARに売却すると発表しました(日経朝刊:2020/7/4:11P)。急速な店舗拡大で失速中の「いきなり!ステーキ」の立て直しに売却資金を充てるようですが,正直なところ火の車で切り離したい「いきなり!ステーキ」には値段が付かなかったのではないか,と推察されます。
いずれにせよ虎の子だった「ペッパーランチ」を売却して経営立て直しを図る一瀬社長,これまで食中毒事故や暴行事件などの経営危機を乗り越えてきているだけに,3度目の奮起を期待したいところです。
それとは対照的に,ひとり焼き肉「焼肉ライク」は新常態に対応する「新業態」として注目されています。筆者は同業態が一昨年に登場した際は,都市部ではいけるが郊外では難しいのではないかと思っていましたが,他人との接触を避ける「個食スタイル」は,コロナを追い風に勢いに乗っている感があります。まさしく,ダイニング・イノベーションの西山社長は,「牛角」を一大チェーンに作り上げた人物だけに,何か「持ってる」と感じいった次第です。

グランピング人気,アウトドア型新業態

アニメの「ゆるキャン」が人気で,アウトドア・キャンプブームです。コロナ事態下で外出は手控えている人が多いものの,アウトドアは「密」ではないということで,どこのキャンプ場も予約でいっぱいのようです(自治体などが運営するキャンプ場などは休止しているところもあります)。
千葉県香取市の農園リゾート「ザファーム」は,農地の中にグランピング施設などを備え,ファミリーやカップルで楽しめる施設で,手ぶらでキャンプが楽しめるスタイルが人気となっています(日経地方:2020/7/17:北関東)。また同社は,同業態をFC方式で全国展開する計画で,温泉施設の采井企業と資本提携し,アウトドアと入浴を楽しめる施設づくりを進めるとしています(日経地方:2020/7/28:埼玉)。
都市部近郊ではキャンプ施設の人気が高まっていて,6月以降続々と新規開業しています。小田原「いこいの森RECAMPおだわら」はテレワークに対応,千葉・勝浦「REWILD MUSIC FES CAMP」は音楽と一緒に楽しめる施設,千葉・市原「THE BAMBOO FOREST」は動物園に隣接しキリンと一緒に朝食が食べられる,などの特色を打ち出しています。
そして,そのような郊外型のキャンプ体験を都心で楽しめる,「アウトドア・カフェ」なる業態が注目されています。東京・兜町「リワイルド・アウトドア・トーキョー」はBGMやインテリアでアウトドアの雰囲気を演出しています。東京・小平「オガワ・グランド・ロッジ・カフェ」は小川テントの直営レストランで,広々とした店内に10張以上のテントが設置され本物さながらのキャンプ体験ができます(日経MJ:2020/7/24:14P,他)。時節柄,三密が避けられる業態として,アウトドア・カフェに注目したいと思います。

(出所:オガワ・グランド・ロッジ・カフェ・小平 HPより)
URL:https://www.campal.co.jp/shops/sort/cafe/index.html

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