「泣きのニッパチ」外食チェーンあの手この手

外食業界では業態により多少の差異はあるものの,売上の季節変動を見るに,好調なのは3月末から4月半ばにかけてのお花見シーズン,年末の忘年会シーズンの2ピークといえるでしょう。逆に昔から「泣きのニッパチ」と言われるくらい,2月と8月は集客の厳しい月となっています。最近では,連休の多い9月も集客が振るわない店舗が多いように感じます。
もちろん,比較的夏枯れしない焼肉業態や連休に強いリゾート地にある店舗など,それぞれに個別の要因がありますが,概ねこのような傾向にあると見てよいでしょう。
さて今月は,その「ニッパチ」の8月に外食チェーン各社がどんな販促やマーケティングを行っていたのか,新聞紙上等で目についたものをピックアップしてみました。

吉野家,ガスト,モスバーガー,KFC,松屋の5ブランドが集結した「ニクレンジャー」なる企画が注目されました(日経MJ:2018/8/29:1P)。もともと吉野家発のこの企画は,新聞紙上で取り上げられる前からTwitter上で話題となっており,8月のコミケではコスプレが登場して盛り上がりを見せるなど,SNSが顧客のシンパシーを高める図式が見えた現象でした。同日の日経MJ同面には,企業のTwitter担当者の座談会が掲載されており,企業のコミュニケーション戦略の潮流を再認識させられました。
 Twitter企画が奏功したのを好材料と見たのか,吉野家HD傘下の「吉野家」と「はなまるうどん」とすかいらーく傘下の「ガスト」は,合同販促キャンペーンを行うことになりました(日経MJ:2018/8/27:13P)。このキャンペーンは,3ブランド共通の「合同定期券」を購入すると1か月間,どの店舗でも割引が受けられるというもの。両社は,客層の異なる3つのブランドが相互に送客することによる新規顧客開拓を期待しています。まさに「呉越同舟」ですね。

他方,フラチャイズ加盟開発マーケティングということでいえば,「牛角」のレインズ創始者である西山知義氏が代表をされているダイニングイノベーションの記事が目に留まりました(日経MJ:2018/8/31:15P)。新橋に直営1店舗目を開業させた「焼肉ライク」は,カウンターにひとり用の無煙ロースターが設置された焼肉業態で,気軽にひとりで焼肉を食べられるのが特徴です。ここのところ高単価の「ひとり焼肉」業態は注目されていることや,お客様が自分で焼くことで提供時間を早くできるということなど,業態としての将来性は感じるところではあります。
筆者が注目したのは,10段1/3の取材記事の同面に,5段1/2の西山氏のセミナー告知が掲載されていたことです。企業経営者限定30名のセミナーを全国で4回行うというもの。これは記事連動型広告ともいえるもので,法人のフランチャイズ加盟開発のマーケティングですね。まさに「牛角」が急拡大していったときのベンチャー・リンク社の手法のような印象を受けました。
西山氏は,フランチャイズ方式をとり,2019年末までに30店,2013年までに300店舗のチェーンに育てる,と方針を語っています。現在,焼鳥「すみれ」を126店舗展開させている西山氏の手腕からして,不可能な数字ではないのかもしれません。夢よもう一度,「焼肉ライク」がこれからどのように発展していくのか,刮目しておきたいと思います。

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