外食業界におけるIoT技術革新

今月の半ばころに出た「週刊ダイヤモンド」は「外食格付け」特集でした。いつものように顧客満足度やその逆などの指数からチェーンの番付がされており,トレンドを見るのに参考になる特集だったと思います。その中で,外食業界におけるIoT導入について3つの切り口が提示されており,すなわち①調理や販売などのオペレーションのロボット化による生産性向上,②チェーンごとのアプリによる顧客の囲い込み,③グルメサイトにおけるプレイヤーの興亡,といったところでした。特に,3番目のグルメサイトに関しては,辛辣な批評を含めてサイトごとの特徴を解説しており,なかなか大胆な記事だと感じました。

そこで,今月の日経関連の記事から吉野家のIoTに関わるものをピックアップしてみました。まずは離れた店舗間をテレビ電話で繋ぐ実験です。店舗内にガラスで仕切られた個室を用意し,インターネットを介してテレビ電話で他店舗の利用客と会話を楽しむ仕掛けです。恵比寿と江坂(大阪)で実験を開始し,新たな利用動機に結び付けたいとしています(日経MJ:2018/11/7:P15)。
次に神奈川の74店舗で試験導入されたAI(人工知能)によるアルバイト採用面接です。アルバイト希望者はスマホでいつでもどこでも採用にエントリーすることができ,希望者の回答によってAIが次の質問を変える,という仕組みです。面接時間は約5分と短めに設定されており,人手不足の昨今,より積極的にアルバイトを採用する方針です(日経MJ:2018/11/21:P13)。
そして,オリガミペイを利用したスマホでの電子決済の導入です。吉野家では,すでに8月から交通系電子マネーによる決済を導入しています。他,吉野家プリカ(プリペイドカード)も導入するなど,決済のキャッシュレス化を進め現金をハンドリングするコストを軽減する狙いです(日経MJ:2018/11/28:P13)。
吉野家は,本年度3~8月の連結決算で増収となりましたが人件費増が響き8億5千万円の赤字となりました(前年同期は13億円の黒字)。吉野家は外食企業の中でも売上高人件費率が高く,人件費上昇が利益に与えるインパクトは大きくなっています。日本版ファーストフードの先駆けである「はやい,うまい,安い」は,戦略を見直さないといけない時期に来ているのかもしれません(日経朝刊:2018/10/6:11P)。

(無断掲載,転載を禁じます)