飲食フランチャイズに関する3つの論点

日本で最大のフランチャイズ関連イベントである,日経新聞社主催「フランチャイズ・ショー2018」が2018年1月31日~2月2日の3日間開催されました。今月は,フランチャイズ・ショーを振り返りながら新聞紙上でのトピックを絡め,3つの論点で飲食フランチャイズを考えて見たいと思います。

【論点1】個人事業主のフランチャイズ加盟
今回のフランチャイズ・ショーの飲食関連出展社の中で,筆者が注目したのは「やきとり大吉」のフランチャイズ本部である「ダイキチシステム」です。ダイキチシステムは,「やきとり大吉」を全国に700店舗をチェーン展開する創業40周年の老舗本部ですが,驚くべくことにフランチャイズ・ショーは初出展でした。高収益につき2年で回収などと謳う本部が多い中で,ダイキチシステムは「夫婦でやって月150万円,20万円で生活して30万円貯金する」というようなことをパンフレットに記載しています。
 加盟希望者が個人事業主の場合,自己資本および借入により用意できる金額は1,500万円程度であり,そうなると店舗面積は10坪程度,月商は150~200万円程度,事業主の手取りは50~80万円程度,となるでしょう。ダイキチシステムのように現実をありのままに伝えることが加盟希望者に受けるのかどうかは別として,業歴の浅いフランチャイズ本部が欺瞞的勧誘により係争となるケースも散見される中,ダイキチシステムの誠実な姿勢は逆に新鮮に映りました。

【論点2】装置産業としての飲食業からの脱却
飲食業の流行廃りは以前にも増して速くなってきており,3年程度で業態が陳腐化する恐れもあります。そういう意味では投資回収は3年程度が望ましいものの,飲食業は初期投資が重く投資回収期間の短縮はそう簡単なものではありません。今回のフランチャイズ・ショーでは,装置産業としてのイートイン型業態ではなく,小売型あるいはサービス型の飲食関連業態の出展が増えていたように感じました。
業歴の長い本部では,JASDAQ上場企業でありポポラマーマなどの飲食店を展開する「ジェーシー・コムサ」が,小売型の「おめで鯛焼き本舗」のブースを出していました。ジェイシー・コムサはミツウロコHDと提携して,中京地区で展開している地域型コンビに「ミツウロコグローサリー」のレジ周りでも「おめで鯛焼き」を販売する予定です(日経MJ:2018/2/7:P13)。その他,移動販売型のメロンパンや,屋外バーベキューセットのレンタルサービスなど,初期投資があまり高額ではない参入障壁の低い業態の初出展も見られました。

【論点3】フランチャイズによる成長戦略の功罪
ハンバーガー業界は競争激化,各社積極的出店の構えであるとの記事が掲載されました(日経朝刊:2018/2/8:P17)。マクドナルドは業績急回復でこれから3年に200店程度の大量出店を計画ということです(日経MJ:2018/2/16:P15)。
ここのところマクドナルド業績回復の記事が目立ちますが,その前に前原田社長が推進したフランチャイズ化の影響を分析しなくてはなりません。直営店のフランチャイズ転換により,それ以降の売上は計上されなくなるものの,その時点で「のれん代」などの売却益が生じます。積極的にフランチャイズ化を進めることで暫時的に売却益が積上がりますが,フランチャイズ化が一巡すればそこから売上が一気に下がることになります。カサノバ社長はこの時点でトップを引き継ぎ,運悪く食品偽装問題も絡んで業績低下の悪循環に陥ったのです。そしてこのような悪いスパイラルに入った際に,他人資本によるフランチャイズ・チェーンは,同一資本のゼネラル・チェーンに較べて環境変化への対応が遅くなりがちであることにも留意しなければなりません。
牛丼業界の競争も熾烈ですが,直営チェーンであるゼンショーの「すき家」と,フランチャイズ店が多かった「吉野家」では,価格政策などの経営のスピード感が違いました。それもあって今から10年ほど前に,吉野家は地方のフランチャイズ店を直営店に買い戻すような動きを見せたこともありました。
このように,業績が上向きな時はフランチャイズによりチェーン展開のスピードアップが図れるというメリットがある一方,業績が下がり始めるとフランチャイズ・チェーンは対応が遅れて負のスパイラルが加速する,ということも理解しておかなければなりません。

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