軽減税率に絡むテイクアウト商品の値付けについて

本年10月からの消費税増税が実施されれば,テイクアウト商品は消費税率8%で据え置きという「軽減税率」が適用される見通しです。もしかしたら施行がまた延期されるのではないというような憶測や,減是率は天下の悪法だというような揶揄も聞こえてはきますが,とまれここでは各外食チェーンの対応を見てみましょう。

 日本KFCは,店内と持ち帰りの商品を別価格で販売することを検討しています。例えば,現行680円(税込)のオリジナルチキンセットは,10月以降店内飲食は693円(税込)持ち帰りは現行通り680円(税込)とするようです(日経朝刊:2019/3/16:P10)。KFCは,どちらかというとクリスマスやパーティーといった「ハレ」の日の需要が多く,売上の70%がテイクアウト商品というところが他の外食チェーンと大きく違うところです(日経MJ:2019/2/18:P3)。KFCでは昨年来,期間限定商品の導入やお得キャンペーンの実施などで日常的な需要を伸ばすマーケティングを行っており,一定の効果は出ているとのことです(日経MJ:2018/11/30:P15)。とはいうものの,テイクアウト比率の高いKFCでは軽減税率の2%を利益として飲み込むわけにはいかない,という意識が働いているのかもしれません。

 一方,3月1日付でリンガーハットの社長に就任した佐々野諸延氏は,「お客様の混乱を避けるてめに(店内とお持ち帰りを)同一価格にすることを検討している」と日経新聞のインタビューに答えています(日経MJ:2019/3/18:P13)。外食チェーンでは,包材コストがかかることを理由としてテイクアウト商品も店内価格と同一とすることを検討しています。日経新聞が持ち帰りが多い外食チェーン向けに実施した昨年末のアンケートでは,回答20企業のうち4割の8社が「同一価格を検討している」とし,同時に4割の8社が「導入には消極的」とも答えていました(日経朝刊:2018/12/8:P1)。多くの外食チェーンはまだ最終的な対応を決めかねている状況ですが,テイクアウト商品を店内と同一価格にするという運用は概ね当局にも認められており,他社動向を見ながら最終決定するものと思われます。

 ところで軽減税率を云々という前に,小職は「テイクアウト商品の値ごろ感はイートイン価格の80%程度が妥当」という持論があります。というのは,テイクアウトでは,イートインスペースを使わない,商品をサービスするスタッフを使わない,ということで,家賃や人件費の一部を費やさずに済むからです。細かい計算は以下のスライドを参照ください。

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