消費税増税から1ヶ月経過
調査会社NPDジャパン(東京・港区)の調査によると2018年の中食市場規模は約8兆円,約25兆円といわれる外食市場の3分の1の規模となってきており,今回のテイクアウトへの軽減税率適用はさらに中食市場伸長の追い風になっているものと思われます。
10月第2週の時点で,吉野家は店内売上が前年割れだったのに対して持ち帰り売上は前年比105%超,タリーズでは売上に占めるテイクアウト比率が5ポイント上昇,同じくモスバーガーではテイクアウト比率は前月より4ポイント上昇し60%になったとのことです。
外食チェーン各社は中食需要の取り込みに躍起になっていて,すかいらーくはデリバリー注文用のサイトを刷新し12月まで割引キャンペーンを実施,吉野家は専用サイトでテイクアウトの事前決済ができるサービスを実験的に提供し始めました(日経朝刊:2019/10/22:13P)。
消費者の立場としては,テイクアウト需要が伸びているような肌感覚はあるものの,大手外食チェーンでなければキャッシュレス還元対象事業者として5%の還元が受けられるということもあって,却って以前よりお得な感じもしないでもありません。
グルメ検索サイトに対する公取委の調査
公正取引委員会は飲食店情報サイトに対して,独占禁止法上の「優越的地位の濫用」にあたる実態がないか調査を始めたと発表しました。年会費支払いの有無で掲載順序を変えるなどの恣意的操作がないかを調査するようです。ぐるなびは公取委から調査を受けていることを認めたものの操作については否定,食べログを運営するカカクコムはコメントを差し控えました(日経朝刊:2019/10/10:3P)。しかしながら,10日の東京株式市場ではこのニュースを嫌忌してカカクコム株が前日比8%安まで売られ株価が大幅に下落,ぐるなび株も一時6%安まで売られる場面もありました(日経夕刊:2019/10/11:5P)。
元々ぐるなびは掲載料の多寡に応じて掲載スペースや順序を変える広告業であり,市場の経済原理が働く分においては(つまり顧客が掲載料に見合った広告効果があると思えばお金を出すし無いと思えばお金を出さない)問題がないでしょう。それに対して食べログは口コミサイトであり,恣意的操作があるとしたならば本来の口コミサイトの意味を失いかねないことになります。そのあたりは公取委の調査に任せることとして,口コミサイトの健全性が担保されることを望みます。
グルメ検索サイトの潮流は,ぐるなび,食べログと続き,今は第3の波としてRettyやFavyが注目されています。これらのサイトは,情報発信者がプロフィールを公開して口コミを掲載するという点で,より信憑性の高い口コミ情報が得られるという期待感があります。InstagramなどのSNSもあわせて,これからグルメ口コミサイトがどのように進化していくのか目が離せません。
ステルスFCとは何か
センセーショナルなネーミングで「ステルスFC」なるビジネスモデルが紹介されました(日経MJ:2019/10/4:1P,13P)。先般,東商マザーズに上場したギフト(東京・町田市)をはじめ,いくつかの企業の事例が紹介されており,フランチャイズでありながら「加盟金ゼロ,ロイヤルティゼロ,店名は自由に付けてよい」というビジネスモデルを称して,ステルス(見えない)フランチャイズとしたのでしょう。
昨今のコンビニエンスストアをめぐるフランチャイズ本部の姿勢が耳目を集める中,加盟者に負担をかけないこういったモデルは新鮮に映ったのかもしれませんが,これは食材業者が以前から行っていてるものであり特に目新しくはありません。
フランチャイズ契約とは,①商標使用許諾,②商品取引,③開業プロデュース業務委託,④経営指導コンサルティング業務委託,の4つが有機的に一体をなした契約と考えることができます。その中で,ステルスFCというのは,②の商品取引に特化しているモデルです。つまり,フランチャイズとは銘打ってもフランチャイズモデルではないので,中小小売商業振興法による情報開示書面の提示等の法的拘束を受けないと推察されます。逆にフランチャイズではないので,競業禁止や中途解約による違約条項の法的根拠が希薄になるのではないかとも懸念されます。フランチャイズビジネスの類型については,以下にその特徴を整理しましたので,参考にしてください。
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