2020年外食チェーン業界を占う

平成が終わり令和となった2019年は,消費税増税や働き方改革といった行政関連のトピックスだけでなく,AI・IT活用やグローバル化の伸展など,外食業界にとってターニングポイントだったと振り返る時代が来るかもしれません。そのような流れの中,2020年が外食チェーン業界にとってどのような年になるのか,直近の話題から予想してみました。

中食の伸長と新たな業態の登場

2019年10月に行われた消費税改定および軽減税率の適用は,中食市場の拡大に拍車をかけたようです。外食チェーン各社は新たな業態やブランドを開発して,この伸びる中食需要をキャッチアップしようとしています。

コロワイド傘下の「かっぱ寿司」は持ち帰りと宅配専門のすし店「はなはち」を開業,ロイヤルホストは自社製冷凍食品の「ロイヤルデリ」ブランドを創設,串カツ田中はSC内に持ち帰り専門店を出店,ワタミは唐揚げ店の出店を検討しています(日経朝刊:2019/12/29:7P)。これらはいずれも,中食に特化した専門業態ですが,外食と中食の境界線はあいまいになってきており,これからは外食と中食のボーダレス業態が出てくるのではないでしょうか。テイクアウト比率が40%を超えるような,イートインもテイクアウトも強い業態が開発されるのではないかと,筆者は予想しています。

また消費税増税以降,KFC,モスバーガー,吉野家などのファストフードの売上は好調で,大戸屋やいきなり!ステーキなどの高単価業態(非アルコール業態として)は苦戦しています(日経MJ:2019/12/25:11P)。筆者は,テイクアウトと同じ値段帯で気軽にイートインできる業態が,ボーダレス業態として世に出てくるのではないかと思います。イメージとしては,ロック・フィールドが展開しているデリショップ「RF1」のイートインスペースを有した路面店を,もう少しお洒落にした「デリ・カフェ」といったものなのではないでしょうか。

働き方の多様化による労務環境の変化

「働き方改革」は,同一労働同一賃金・長時間労働の是正・多様な働き方の推進が柱であり,これらは当然,働く人たちの権利を守りワークライフバランスのとれた働き方を推進するためには大切なことです。しかしながらその一環として非正規雇用者への社会保険加入適用枠を拡大することは,外食チェーンのレイバーコストを大きく押し上げることとなり,業界団体はこぞってこれに反対しています。

日本フードサービス協会(東京・港)などの業界7団体は,短時間労働者への社保加入適用拡大に反対する声明を出しました。人手不足が深刻化する外食業界にとっては,社保加入適用拡大はコスト増だけでなく人手不足を助長することにもなりかねず,問題解決には社会保険制度の抜本的な改革が必要だとしています(日経MJ:2019/11/25:13P)。外食業界の人手不足に対しては,高齢者や主婦などによる多様な働き方の実現が急務です。しかしながらそれらを推進しようとすると,同一労働同一賃金や社保加入適用拡大によりコスト増となるという,ジレンマに陥っているように感じます。

一方,働き方改革の先手を打って,積極的な人事労務施策により従業員の多様な働き方を進めモチベーション向上を図る動きが,大手外食チェーンに見られます。すかいらーくHDは年末年始の時短休業や禁煙活動を推進,イートアンドは完全週休3日の限定社員制度を新設,吉野家ではボランティア休暇取得制度の運用などの施策を進めています(日経MJ:2019/11/29:15P)。外食チェーン業界は,特定技能研修を修了した外国人労働者の活用やオペレーションの機械化自動化なども含めて,「働き方改革」を模索するターニングポイントにあるのかもしれません。

IT・AIによる業務革命

IT・AIによる業務改革は調理などのオペレーションに限らず,CRM(顧客関係性マネジメント)やMA(マーケティング・オートメーション)にも活用されるようになるでしょう。ロイヤルHDは楽天と提携して,完全キャッシュレスの店舗「ギャザリング・テーブル・パントリー」を二子玉川に出店します。来店客はタブレット端末により注文から決済まで自分で済ますことができるほか,期間限定で顔認証による自動決済システムの実験も行う予定です(日経朝刊:2019/12/24:15P)。

若手起業家と現役学生たちが運営するデータクト・ジャパン(東京・文京)は,飲食店におけるD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー,プラットフォーマーを介せず消費者と直接つながること)を支援するITベンチャー企業です。顧客データはあるが活かし方がわからない,という飲食業等の消費者向けビジネスを展開する企業に,それらのデータを分析してマーケティングに活かすサービスを提供しています(日経MJ:2019/12/18:1P)。

AIの顔認証により,顧客の滞在時間や滞在時の行動パターンがデータとして蓄積されるだけでなく,POSデータと連動してより詳しいRFM分析やそれらをもとにしたCRMやMAが可能になる日も,そう遠くないのではないかと筆者は予想しています。

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